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2012.12.22 00:00


『「パイプカットでもしたほうがいいかもね。」と麻子が言ったので
「いやだ」と俺は答えた。
麻子と一緒に、リビングでごろごろしながら、
春の昼下がりをすごしていたときのことだ。』


クリスマスらしい表紙に惹かれました。
book最後の恋

最後の恋、をテーマにした8編のアンソロジー。
タイトルからいっても、キラキラした可愛い表紙からしても
ロマンチックな恋人同士の話が詰まっていると思いきや
実はけっこう怖いような、どきりとする話が多かったのです。
私が好きだったのは、「ヒトリシズカ」と「海辺食堂の姉妹」。
どちらもラストにどんでん返しがあって、あっと驚きます。
読んでいてドキドキして、こういうちょっとしたオチがあるのがやっぱりいいな。

■収録作品■
「春太の毎日」三浦しをん 
   俺、春太の愛する麻子のもとに最近、米倉というやつが訪ねてくる。
   どうやら恋敵らしい。麻子が愛するのは俺だけなのに・・・!
「ヒトリシズカ」谷村志穂
   北海道に暮らす瑞江は、年に数回東京の自宅に帰るのだった。
   世界を飛び回る写真家の恋人、瑠木(るき)が帰るのを部屋で待つために。
「海辺食堂の姉妹」阿川佐和子
   海沿いの食堂を切り盛りする姉妹。仲の良い二人の性格はまるで正反対だった。
   人見知りで恋に縁遠い妹を心配する姉だったが・・・。
「スケジュール」沢村凛
   子どもの頃からスケジュールが得意だった妙。24歳で恋愛して25歳で結婚するのが彼女の計画。
   しかし人生は大波。彼氏以外の男に一目ぼれしてしまった妙がとった行動は・・・。
「LAST LOVE」柴田よしき
   真由美は恋人の剛志から、最後の恋をしてしまった、と振られた。最後の恋ってなんだ!
   しかし彼女はやがて、最後の恋の意味を知る。
「わたしは鏡」松尾由美
   大学の文芸サークルの部室に、匿名の原稿が置いてあった。『わたしは鏡』と始まる、せつない恋を
   描いたその原稿の主を、比呂は探すが・・・。 
「キープ」乃南アサ
   十五歳の失恋に懲りてもう人を好きにならないと誓いの言葉を立てた私。
   それは呪いの言葉となって二十年も自分を苦しめていた。  
「おかえりなさい」角田光代
   怪しい宗教団体のパンフレットを配るバイトのため訪れたその家。
   初対面の彼に老婆は『おかえりなさい』と言い、家に上げるのだった・・・。

最後の恋/三浦しをん他 278P
お気に入り度:★★★☆☆

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タグ : 三浦しをん 谷村志穂 阿川佐和子 沢村凛 柴田よしき 松尾由美 乃南アサ 角田光代

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2012.12.21 00:00


『新製品に目移りする。
薄い水色の地に、一面に白抜きでアネモネの模様が描かれた付箋。
フィンランドのデザイナーの手によるものなのだそうだ。
いったいどんな仕事をしている女性がこんなものを買うんだろう。』


カソウスキ、ってなんだろう?
bookカソウスキの行方

機械部品の卸会社に勤める28歳のOL、イリエ。
彼女は後輩のセクハラ相談につい熱くなって直談判したあげく
辺鄙な倉庫に飛ばされてしまう。
倉庫では、カタログを見ながら備品の注文をしたり、シフト表を作ったりと
「しょうもない雑用」をこなす毎日がただ過ぎてゆく。
おまけに身を寄せている友人が結婚することになり、部屋を出ていかなければならなくなり
しかたなく古くてすき間風の吹き抜ける、会社の契約アパートに引っ越す。

そんな希望の持てない毎日だけど、なにか楽しみを見つけるために
イリエは同僚の森川を好きな人に見立てようと決めます。
好きになると仮定する → 仮想好き(カソウスキ)。

なんというかとっても不思議な小説でした。
教訓めいたことはなにも残らない、かるい文章なんだけど
主人公のイリエの考えることや、会話のリズムなんかがすごく面白くて
まるで彼女のブログを覗き見てるような、彼女の日々の行動をこっそり覗いてるような。

たとえば、いつも嫌味っぽい藤村に「体調悪いんですか?」と聞かれて
「ああもう、慰めてくださいよ、泣きたいっすよ、何もいいことがないんですよ、
 せめて付き合おうとか言ってくださいよ」とまくしたてたくなったとか。

シアトルコーヒーの店で、好きでもないコーヒーをいちばん大きいサイズで頼んでしまい
「ほとんどの客がこんな固い椅子に座るのがわかってるのに、なんでこんなすごい量の
 コーヒーを出すんだろう」とひとりごとを言ってみたり。

気が進まないままショッピングモールの福引に並び、くじを引くと
なんと1等のフィンランド旅行が当たってしまい、なぜか「いいです」と言い残して
追ってくる店員を振り切って、フェイントまでかけて全速で逃げ出してしまったとか。

なんかこう抜き出してみると、おもしろさが全然伝わらないのだけど
イリエのつぶやきに沿ってみると、なんとも言えないおかしさがこみ上げてきます。
それは、あははっという笑いではなく、くくくっというひとり笑い。

このほかに、2編の短編が添えられていますが、こちらも本編に負けないくらいの
妄想&ひとりごとのオンパレード。
こういうシュールな笑いって読む人を選ぶかもしれないけど
OLさんの日常あるあるとか、そうそう!ってうなづいてしまうことも多くて
また読んでみたいなと思ったのでした。

■収録作品■
カソウスキの行方
Everyday I Write A Book
   野枝がいいなと思った男シカドには絵本作家の妻がいた。彼女が地下鉄のICカードのデザインをしたことで
   通勤のたびにそのイラストを目にするという切ない毎日。シカドの友人のオサダと会ううち次第に野枝は
   癒されてゆく。
花婿のハムラビ法典 
   ハルオの婚約者サトミは気取りがないところがいいのだが、なにせ遅刻やドタキャンが多い。
   彼はそのうちサトミの行動を数値化して手帳に書き留めるようになる。
   そして彼女の不義理1ポイントにつき自分も不義理で返すことで気持ちの整理をするのだった。

カソウスキの行方/津村記久子  145P
お気に入り度:★★★☆☆
2008年(第138回)芥川賞候補

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タグ : 津村記久子

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2012.12.20 00:00


『ピクニック用の折りたたみテーブルが不要になったので
インターネットのオークションで売ることにした。
四十二歳になる山本紀子には二人の子どもがいるが
下の子が中学に上がってからというもの、家族で出かける機会がめっきり減った。
この夏はとうとうどこにも行かなかった。』


book家日和

家庭の中で起こる小さな出来事。それはさほど大きな事件ではないけれど
ひっそりとかすかにさざ波を起こしてゆきます。
それでもそのさざ波は少しずつ静かになっていき、やがては何事もなかったように
人知れずまた以前の静かな海面に戻ります。

ここに収録された6編の主人公は、どれもふつうの妻と夫。
身近に起こりそうで、でも実際起こったらちょっと取り乱しそうな出来事を
鋭くも温かい目線で描いています。

私が好きなシーンは、2つめの「ここが青山」で、主夫になった裕輔に厚子が駅から帰るコールをしてくることで、その間に海老フライを上げることができることに気付き、自分もそうすればよかったと気付くところ。
逆に厚子は仕事から帰ったとたんに「どうだった?」と聞かれるのはけっこう面倒なことに気付くのです。
仕事をする妻の立場の私は、両方の視点で「そうそう!」とうなってしまった。
一度、立場を入れ替えてみるのっていいかもって思っちゃった。ほんの一瞬だけならね(笑)

■収録作品■
サニーデイ
   子どもも手がかからなくなり、家族の全盛期が終わったと嘆く専業主婦の紀子は
   ふとしたことからネットオークションにはまり出す。
   品物が落札され、現金が手に入り、さらに高評価を得ることで輝きを取り戻していく。   
ここが青山
   会社が倒産し、妻が働きに出ることになった流れで自然に専業主夫となった裕輔。
   周囲からは同情や好奇の目で見られるが、意外に料理も掃除もこなしながら
   小さな喜びを見出してゆく。
家(うち)においでよ
   インテリアにうるさい妻と別居することになり、正春は今までの我慢を晴らすように
   自分好みの家具やオーディオを揃え、自分の城を作り、男のひとり暮らしを堪能する。
グレープフルーツ・モンスター
   佐藤弘子は東京郊外に住む平凡な主婦。一通7円のデータ入力の内職をしている。
   ある日、内職あっせんの営業担当が変わったといって、サーファーのようないでたちの
   日焼けした若い営業マンが現れる。グレープフルーツの香水の香りをさせて。
夫とカーテン
   春代の夫、栄一はいつもの癖で突然会社に辞表を出し、カーテン屋を始めると言い出した。
   ひらめきを頼りに行動する無計画な夫にため息をつきながら、春代はイラストレーターの
   自分の仕事に精を出す。
妻と玄米御飯
   小説家の康夫は、ある賞をとりベストセラー作家となったとたん、妻がセレブ化し
   ロハスに目覚めてしまった。食事は玄米御飯にオーガニック、その他洗剤やヨガにもはまり
   家族にも強いるようになる。康夫はその様子を皮肉った小説を書こうとするが・・・。   

家日和/奥田英朗  235P
お気に入り度:★★★★☆
2007年(第20回)柴田錬三郎賞受賞

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タグ : 奥田英朗 短編集

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2012.12.19 00:00


『求めていらっしゃるのは、この人ではないでしょうか。
一年前の六月三十日の夜明け前、わたしは両親に気づかれないよう
靴下のままドアを開け、外へ出てから靴をはき、
深い藍色におおわれた空の下を、早足で駅へ向かっていました。』


ちょっと前、向井理主演で舞台化されました。
book悼む人

主人公の坂築静人(さかつきしずと)は、ラジオの報道や新聞記事などを手掛かりに
亡くなった人を「悼む」旅を続けている。
その人たちがなぜ亡くなったかではなく、彼らが誰を愛していたか、
誰から愛されていたか、それを心に刻んでゆくという静人。
ストーリーは、夫を殺した罪で服役した女倖世(ゆきよ)、静人の母で末期の癌を患っている巡子、
そして静人の「悼む旅」に興味を示す記者蒔野(まきの)のそれぞれの目線ですすんでいきます。

静人は物語前半から悼む旅に出かけてゆくのですが、最初はそれがなかなか理解できずもどかしくて。
彼は人が亡くなった現場にひざまづき、独特のポーズで亡くなった人に思いを馳せ悼むのですが
遺族や関係者からは不快な思いをぶつけられ、あるときは不審者扱いをされてしまう。
金銭的にも困窮し、心の均衡まで失いかけてゆく静人。
どうしてそうまでして彼は旅を続けるのか?
私だけではなく、読む人みんなそう思うでしょう、きっと。

けれど物語後半、いつしか共に旅するようになった倖世に対して
少しずつ苦悩の胸の内を告白しはじめるのですが
そのあたりからなんとなく静人の人間味を覗かせてゆきます。

とはいえ、母巡子の容体が悪くなってゆくなか、変わらず悼みの旅を続ける静人の心境や
静人と倖世の心の通い合いのシーンはあまり共感できなかったなぁ。

悼む人/天童荒太  441P
お気に入り度:★★★☆☆
第140回(平成20年度下半期) 直木賞受賞

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タグ : 天童荒太 長編小説

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2012.12.18 00:00


『天から注ぐ西日がグラウンド一面にホースで撒いたような橙を広げている。
無数の小さな靴底がその橙を蹴散らし、光が拡散する。
光の粒子とも砂ともつかないざらざらが立ちのぼり、
うごめく人影を不透明な膜で覆う。』


なんだか謎めいたタイトルに惹かれて読みました。
book架空の球を追う

大きな事件が起こるわけでなく、なにげない日常のひとコマ。
そんな情景をカメラのフレームで切り取るように描いたような印象です。
ミステリー好きの私は、どんでん返しとかラストのオチを期待してしまうんだけど
それはあまり見当たらなかったな・・・
ほんとにささやかなひとコマ、って感じ。

その中で唯一、「あの角を過ぎたところに」は
ラストに不穏な余韻を残して終わっていてなんだかどきどきしました。

『やっぱり罠にはまった。そんな気がする。
この世界の至るところに張りめぐらされた人智の及ばない仕掛けに
ついに足下をすくわれたような。』


それ以外はあまり印象に残らなかったのが正直なところ。
今の私は、こってりした長編小説を読みたい気分なのかも。

■収録作品■
「架空の球を追う」
  夕暮れ時、グランドで練習する少年野球の子どもたちと、それを見守る母親たちの目線。
「銀座か、あるいは新宿か」
  高校時代の友人と年2回集まる会。その場所は銀座がいいか、新宿かで延々と語り合う5人。
「チェリーブロッサム」
  桜並木をバックにカップルから写真を頼まれる。その時男性がトレンチコートの女性を目で追った・・・
「ハチの巣退治」
  ボスの出張中にハチの巣退治を命じられた社員たちは、何でも屋のジョーに電話をかける。
「パパイヤと五家宝」
  スーパーで2000円のパパイヤを簡単にカゴに入れる女性を見つけ、後を追うが・・・
「夏の森」
  100均で買ったカブトムシを森に逃がしに行く途中、小学校の憧れの先生の言葉を思い出す。
「ドバイ@建設中」
  御曹司との婚前旅行で訪れたドバイ。結婚に向けて首尾よく振舞うはずだったのだが・・・
「あの角を過ぎたところに」
  タクシーで移動中、昔通った店がなくなっているのに気付いた。それを聞いたドライバーは突然Uターンした・・・
「二人姉妹」
  ささいなきっかけで気まずくなった姉妹。その二人をまた近づけたのは意外な出来事だった。
「太陽のうた」
  難民キャンプにやってくるNGO関係者のビジターと、そこで暮らす女性との葛藤。
「彼らが失ったものと失わなかったもの」
  バルセロナ空港内のリカーショップで私が迷ったワインを、旅行者の夫妻が買った。その直後・・・

架空の球を追う/森絵都  191P
お気に入り度:★★☆☆☆

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タグ : 森絵都 短編集

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2012.12.17 00:00


『冷凍食品のお好み焼き、メーカーは加ト吉、おにぎり二個、いくらとチキンマヨネーズ、
ペットボトルの冷たいお茶が切れている、アーモンドチョコレート、
素麺のつゆ、単四電池四個、発泡酒ロング缶三缶、というのが、
携帯に電話をかけてきてヤスオが頼んだ品々で、
私はそれを復唱しながらコンビニエンスストアの店内を歩く。』


bookエコノミカルパレス

34歳フリーターの「私」は、同じくフリーターのヤスオと小さなアパートで同居している。
ヤスオは「タマシイがない」と言っては、派遣の仕事をあっさりと辞め
せっかくもらえる失業保険も、ハローワークの面接に行かなかったことで
認定が下りずお金を受け取れない。

一方の主人公も、なかなかフリーターの域を抜け出せず
コンビニ代はだれが出すだの、預金残高がわずかだのと
お金の心配ばかりしている。

なんだかね、けっこう身につまされるシーンばかりで
くらーい気持ちになってしまうのですよ。。。
一文無しの友達が転がり込んでくるとか、消費者金融で借りたお金で洋服を買ってすっからかんとか
なにやってるんだろうな~って、ひとつも共感できないんだけど
このザワザワする嫌な感じとか、抜けだせない蟻地獄感みたいなのを書かせたら
角田さん、ほんっとに上手いなぁって思うんですよね。

エコノミカル・パレス/角田光代  177P
お気に入り度:★★★☆☆

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2012.12.16 21:32


『そのホテルは地下にあるという。
最下階は十三階、客室は九十九ある。
募集しているのはフロントデスクの受付だった。
年齢や学歴は問わず、接客の経験がなくてもかまわない。
勤務時間は日没から日の出まで。
夜に強く、孤独癖があり、めったにいらいらしないひとを歓迎する、という。』


bookオテルモル

オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン。
主人公の希里(きり)が採用されたそのホテル、いえ「オテル」はちょっと風変わり。
ビルとビルのせまいすき間に建っていて、横歩きじゃないと入れない。
チェックインは日没、チェックアウトは日の出までと厳しく定められ
会員たちは最高の眠りを手にするために、この奇妙なオテルに毎晩集まるのです。

とにかくすべてが不思議で、現実味のないお話。
地下へ地下へと深く掘られたホテルもなんだかおかしいし
そこで働く客室係の外山さんのたたずまいもなんだか不思議。
希里が採用された一番の理由が、彼女が眠りを誘う顔だからですって。ふふふ。
そしてホテルへ入るまでの路地は、狭すぎてマイム・マイムのようなステップになってしまう(笑)

全体がほわんとした夢の中のような印象で、なんだか心地良いのです。
むずかしい教訓みたいなのは語られず、淡々としているのに
読んだ後、不思議な余韻が残るのはなぜなんだろう?

レビューを読むと、「村上春樹っぽい」という意見が複数あったのが意外でした。
読んでいるときはこれっぽっちも思わなかったけど
ふりかえってみると、うーむ、なんとなくわかる。
村上さんの短編っぽい、ドライな不思議感というのかな、そんなのが残ります。

短くてあっさりした作品なのに、駅前でふとビジネスホテルを見かけると
今ここに泊まっている人は快眠中なのかなぁ、とか
深夜のフロント係の人は、睡魔をかき消すために変な踊りを踊っているのかな、なんて
ふと考えてしまうんです(笑)

オテル モル/栗田有起  180P
お気に入り度:★★★★☆

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タグ : 栗田有起 長編小説

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2012.12.16 21:15


『夏休みの第一日目、私はユウカイされた。
なんの予定もなくて、家にはだれもいなくて、
寝転がって見ていたテレビに映った、新発売のアイスクリームが美味しそうだったから、
買いにいくつもりで家をでた。』


bookキッドナップツアー

小学5年のハルは、夏休みのある日「ユウカイ」される。
しかも「ハンニン」はハルのお父さん。

物語はハルの目線と言葉で淡々とつづられてゆきます。
小学生らしい反抗で、行く先々で出会う人に対しても不機嫌になったり
お父さんにもふてくされた態度をとるハル。

この年頃の子どもって(特に女の子?)、大人って嘘つき、って思ったり
よその家の茶の間が居心地悪かったり、夕暮れどきなんだか不安になったり
海で出会った女の子と友だちになったり。
子どもの頃のこういった感覚って、大人になっても覚えていたりするものです。
ハルの小さな反抗もなんだか覚えがあるなぁ。

私たちの真ん中でつないだ手はブランコみたいに揺れ続けた。
月は小さく真っ黄色で、私の手はほんのりあたたかい大きなてのひらの中にあって
道の先ににじんだ明かりが、いつまでも近づかなければいいのに、とそんなことを思った。


ただ、父と母が繰り返し電話で話す「取引」とは何だったのかとか
どうして突然誘拐をし、とつぜんやめてしまったのか。
そういう大人の都合が描かれていないので、ちょっとすっきりしない終わり方です。
なんでも結果が知りたくなる「オトナ」には・・・どうかな?

キッドナップ・ツアー/角田光代  212P
お気に入り度:★★★☆☆
第46回(平成11年/1999年)産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞
第22回(平成12年/2000年)路傍の石文学賞受賞

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2012.12.16 21:00


『りんごをたくさん買いこんだ。りんごが好き。
「りんごでも食べようか」ということになるあの感じがまず好き。
りんごを四つに切って皮を剥き、剥けるのをみんなで待つ。剥く人に期待集中。
だからといって、それが重荷だというほどの期待感ではないのだし。』


book私の献立帖


食べ物のエッセイを書く人ではダントツ大好きな山本さん。
彼女の書く食べものとは、美味しいお店でもなく、豪華なグルメでもなく。
おうちで家族のためにつくる、ほっかほかのごはん。

用事で帰りが遅くなるといえば、家族のためにちらし寿司をせっせと作り
友達の家に招かれるといえば、中華ちまきを60個(!)も作る。
かと思えば、冷凍庫で見つけた焼売をすまし汁に浮かべて喜んだり
毎朝食べる手作りゼリーを、いろんなジュースで作ってみるお茶目なところもあり。

もちろん食べ物エッセイだとわかって読み始めたのだけど
どのページにも美味しそうな食べ物が、どんどん出てきて
ほんとにおなかがすいて困ってしまったのでした!

バターを塗ったトーストに、たっぷりのせた煮りんご。
うすく敷いたごはんに、削ったかつお節、ちぎったのりをのせ、醤油をまわしかけ、
再びごはんをのせたのり弁。
火を止める直前に、湯葉をぱきぱき割って入れた味噌汁。
高尾山の頂上で食べるおむすびともろきゅう(麦味噌付き)。
冷たい麺の上にあたたかい肉味噌ときゅうりをのせたジャージャー麺・・・

こう書いていてもまたおなかがすいてきて、まるで苦行のようなのです(笑)

そしてもうひとつ、彼女の文章で印象に残ったもの。好ききらいについて。

「食べられないよ。残していい?」と堂々と宣言する子どもに向かって、
わたしは決まってこう言ったものだ。
「きらいだなんて、えばらないの。胸の中で思うだけにしなさいな」
宣言すると、それが現実にこびりついてしまうような気がする。
きらいだきらいだと言っている間は、食べられるようにはならないし
ましてや好きになどならない。
実は、このことは人間関係にも当てはまる。
「わたし、あのひとはきらいよ」
というようなことを、ときどき耳にする。
「あのひと」にわたしが面識もないのに、きらいだなんて話、聞きたくない。


ああ、うまいこと言うなぁ。
人の噂話(特に悪い話)は、話しているお互いが共通する感情だったらありだけど
片方が一方的に、あのひときらい、って言うのってなんかずるいよね。
ほっこりした文章を書く山本さんの、ちょっとぴりっとしたところが
なんか爽快に思えるのでした。

わたしの献立帖―ふだんのごはんのたのしみ/山本ふみこ  173P
お気に入り度:★★★☆☆

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2012.12.13 01:23


『長谷川カヤノは悩んでいた。
三十二年間生きてきて、はじめて恋人ができたというのに
なんというか、今ひとつもりあがりが足りないのだ。
足りないような気がするのだ。
なんか、恋愛って・・・・と、長谷川カヤノはひとりきりのときに考える。』


何年か前、角田ファンになる前に一度読んだこの本、再読しました。
bookAllSmallThings

短編集って物足りなくてあまり得意ではないけれど、連作短編集は別。
さまざまな人物の短いストーリーが、次の話に少しずつ重なりながら
リレーのようにバトンをつないで進んでいきます。

32歳にしてはじめて彼氏ができた、長谷川カヤノ。
彼とのデートは、週末家でごろごろしたり、夕飯を家で食べたり。
思い描いていたようなおしゃれなデートはしてくれない彼に
これは「恋愛」ではないんじゃないか、と思い悩みます。

そしてカヤノは、友人の田口さと実に質問するのです。
「ねえ、今までで一番印象に残っているデートってどんなの?」

そうして自分の印象に残っている、けれど冴えないデートを思い出しながら
さと実もまた別の人に質問を重ねるのです。その相手は彼女の夫、田口寿史。

そして寿史は部下の比佐子に。
比佐子は姪のまりんに。
まりんは祖母の泰子に。
泰子はスポーツクラブのインストラクター、香に。

質問はちょっとずつ形を変えながら、彼女たちの思い出に触れながら
人間関係の輪の中をぐるっとめぐっていきます。
そしてやがてカヤノは、ひとつの答えを手にするのです。


私がふと思い出した小さなデート。
それは彼の友人の家に遊びに行ったときのこと。
高速に乗って2時間余りの車の中。
半分に切ったキウイをスプーンで食べる私を見て
「スプーンでキウイ!しかも車の中で!」って笑いながらも
なぜかその状況にハマって、二人でいくつも食べたっけ。
そして到着して、友人のお母さんが用意してくれていたのは、なんとキウイ!(笑)
もう笑いこらえて一生懸命食べたけど、帰りの車でまた大笑い。

バブリーな時代もあったけど、思い出すのはこんなちっちゃな思い出。
でもそんなもんじゃないのかなぁ。

小説としてはとっても短くて、とっても軽い印象。
けれど読む人はみな、きっとそれぞれのちっちゃな恋を思い出すのだろうな。

All Small Things/角田光代 125P
お気に入り度:★★★☆☆

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タグ : 角田光代 連作短編集

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